ヘルスケア論文研究室
メンタルヘルス

人生を語り直す電話の対話で、高齢者の孤独感が1年後まで軽くなった

📄 Lay cousellor-delivered wisdom-enhancement narrative-therapy and empathy-focused interventions to reduce loneliness among older adults: A three-arm randomized controlled trial.

✍️ Jiang, D, Tang, VFY, Chow, EO, Kahlon, M, Yeung, DY, Aubrey, R, Liao, J, Yu, J, Mo, PK, Chou, KL

📅 論文公開: 2026年1月

孤独感 高齢者 ナラティブセラピー 電話での支援 睡眠の質

3つのポイント

  1. 1

    香港の高齢者287名を3つのグループに分け、専門職ではない研修を受けた相談員による電話での対話が孤独感を軽くするかを1年間調べました。

  2. 2

    自分の人生経験を語り直して知恵を引き出す対話を受けたグループでは、2つの尺度のうち1つで孤独感が6か月後と12か月後に有意に下がりました。

  3. 3

    このグループでは12か月後の睡眠の質も改善しましたが、もう1つの孤独感の尺度ではグループ間の差が見られませんでした。

論文プロフィール

  • Jiang らによる研究で、2026年に老年精神医学の専門誌 International Psychogeriatrics に掲載されました。
  • 調査対象は、香港に住む高齢者287名です。
  • 研修を受けた一般の相談員(医師や心理士などの専門職ではない人)が電話で行う2種類の対話が、孤独感を軽くするかを調べました。

エディターズ・ノート

高齢者の孤独は、心と体の両方の健康に関わる課題として注目されています。専門職でなくても担える電話での支援が1年後まで効果を示したことは、家族や地域での関わり方を考える手がかりになると考え、この研究を届けます。

実験デザイン

この研究は、参加者をくじ引きのように無作為にグループへ振り分けて効果を比べる ランダム化比較試験 です。結果を評価する担当者には、参加者がどのグループかを知らせない形(評価者盲検)で行いました。

3つのグループ

  • 人生を語り直す対話(Tele-NT): 自分の人生経験を振り返って語り、そこから得た知恵に気づくことを促す電話での対話です。ナラティブセラピー(語りを通じた心理療法)の考え方に基づきます。
  • 共感に重点を置いた対話(Tele-EP): 相談員が相手の気持ちに寄り添って話を聞くことを中心にした電話での対話です。
  • 比較のためのグループ: 上の2つとは別の、比較のための関わりを受けたグループです。

測ったもの

  • 孤独感を2つの尺度で測りました。UCLA孤独感尺度(改訂版)と、De Jong Gierveld 孤独感尺度です。
  • あわせて、周囲からの支えの感じ方、気分の落ち込み、睡眠の質、人とのつながりも調べました。
  • 測定は、開始前と、1か月後・6か月後・12か月後に行いました。

主な結果

  • UCLA孤独感尺度では、グループ間で全体として有意な差は見られませんでした。
  • De Jong Gierveld 孤独感尺度では、人生を語り直す対話のグループで、6か月後と12か月後に孤独感が有意に下がりました。
  • 12か月後には、2種類の対話のグループのどちらでも、親しい人がいないと感じる孤独(情緒的孤独)が有意に下がりました。
  • 人生を語り直す対話のグループでは、6か月後に人とのつながりが少ないと感じる孤独(社会的孤独)が下がり、12か月後には睡眠の質も改善しました。

要旨には効果の大きさを示す数値が書かれていないため、この記事では数値のグラフを示していません。

🔍 孤独感の2つの種類

この研究で使われた De Jong Gierveld 孤独感尺度は、孤独感を2つに分けて測ります。

  • 情緒的孤独: 心を許せる親しい相手がいないと感じる孤独です。配偶者を亡くしたあとなどに強まりやすいとされます。

  • 社会的孤独: 友人や知人など、広い人とのつながりが足りないと感じる孤独です。

    2つの尺度で結果が分かれたのは、尺度ごとに孤独感のとらえ方が異なるためと考えられます。

日常への活かし方

この研究を踏まえると、私たちの日常では次の点を意識すると良いかもしれません。

  • 離れて暮らす親や祖父母と電話で話すときは、近況の確認だけでなく、昔の出来事やそこから学んだことを尋ねてみましょう。人生を語り直す対話は、こうした問いかけに近い関わり方です。
  • 話を聞く側は、助言をするよりも、相手の経験を受け止めることを意識すると良いかもしれません。
  • 自分自身が孤独を感じたときは、これまでの経験を誰かに話したり、書き出したりして振り返ってみるのもひとつの方法です。
🔍 この研究の限界
  • 孤独感の2つの尺度のうち、UCLA孤独感尺度では効果が確認できませんでした。効果の現れ方は、測り方によって異なります。
  • 対象は香港の高齢者で、文化や生活環境の異なる地域で同じ結果になるかは分かりません。
  • 要旨には効果の大きさが示されていないため、どのくらい孤独感が軽くなったかの程度は判断できません。

この結果がすべての人に当てはまるとは限りません。強い孤独感や気分の落ち込みが続くときは、医療機関や地域の相談窓口に相談してください。