ヘルスケア論文研究室
栄養学 · 更新 2026年7月7日

14種類の人気ダイエットを比べたら、半年後の差はほとんどなかった

📄 Comparison of dietary macronutrient patterns of 14 popular named dietary programmes for weight and cardiovascular risk factor reduction in adults: systematic review and network meta-analysis of randomised trials

✍️ Ge, L, Sadeghirad, B, Ball, GDC, da Costa, BR, Johnston, BC

📅 論文公開: 2020年

ダイエット 減量 心血管リスク 糖質制限 低脂肪食

🕒この記事の元論文は出版から6年以上が経過しています。最新の研究も併せてご確認ください。

3つのポイント

  1. 1

    121件のランダム化試験・約2万2千人を統合し、14種類の人気ダイエットを一度に比較した大規模研究です。

  2. 2

    低糖質食も低脂肪食も、半年後の減量効果と血圧などの改善はおおむね同じ程度でした。

  3. 3

    しかし12か月後にはその効果の多くが失われ、「続けられること」が最大の鍵だと示されました。

論文プロフィール

  • 著者: Ge L, Johnston BC ほか(マクマスター大学ほかの国際研究チーム)
  • 発表年 / 掲載誌: 2020年 / BMJ(英国医師会雑誌)
  • 調査対象: 過体重(BMI 25〜29)または肥満(30以上)の成人。合計 21,942人
  • 調査内容: 121件のランダム化試験を統合し、14種類の人気ダイエットと 3種類の対照食を、減量と心血管リスク因子の改善で比較

この研究は、個々の試験を単純に足し合わせるのではなく、 ネットワークメタ分析 という手法を使いました。直接比べていない食事どうしも、共通の比較対象を「橋渡し」にして間接的に順位づけできるのが特徴です。

エディターズ・ノート

「結局どのダイエットが一番痩せるの?」——書店にもSNSにも答えがあふれる問いに、これまでで最大級の証拠で正面から向き合った一本です。糖質制限か、低脂肪か。流行の名前に振り回されがちな私たちが、いま一度「何を選ぶか」より「何を続けられるか」に立ち返るために届けます。

実験デザイン

研究チームは1つの試験だけを見るのではなく、121件 ランダム化比較試験 を集めた システマティックレビュー として分析しました。参加者は合計 21,942人で、地中海食・低糖質食・低脂肪食・Atkins・DASH食など 14種類の名前つきダイエットと、3種類の対照食が比較対象です。

評価した項目は、6か月時点と12か月時点での次の変化です。

  • 体重
  • LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール
  • 収縮期・拡張期血圧
  • CRP(体内の炎症の強さを示す血液中の目印)
減量・血圧改善の効果は6か月で最大となり、12か月ではほとんど消えるという傾向を示した概念図(実数値ではありません) 0 16 32 48 64 80 効果の残り具合(イメージ) 80 6か月後 25 12か月後
減量・血圧改善の効果は6か月で最大となり、12か月ではほとんど消えるという傾向を示した概念図(実数値ではありません)
項目 効果の残り具合(イメージ)
6か月後 80
12か月後 25
減量・血圧改善の効果は6か月で最大となり、12か月ではほとんど消えるという傾向を示した概念図(実数値ではありません)

結果はシンプルでした。低糖質食も低脂肪食も、6か月時点での減量効果はおおむね同程度。血圧をはじめとする心血管リスク因子も、多くの食事で「そこそこの改善」が見られました。証拠の確実性は中程度(moderate certainty)と評価されています。

ところが 12か月後には、体重の減少も心血管リスクの改善も、その多くが失われていました。半年で得た成果が、1年後には振り出しに近づいてしまうのです。

🔍 なぜ「効果が消える」ように見えるのか

12か月で効果が薄れる背景には、いくつかの要因が考えられます。

  • リバウンド: 厳しい食事制限ほど長続きせず、元の食習慣に戻りやすい。
  • 脱落: 続けられなかった人が試験から抜けると、残った人の平均だけでは全体像が見えにくくなる。
  • 体の適応: 減量が進むと消費エネルギーも下がり、同じ食事でも体重が落ちにくくなる。

つまり「食事内容そのものの差」よりも、「どれだけ続けられたか」が最終的な結果を左右した可能性が高いのです。

日常への活かし方

この研究を踏まえると、私たちの日常では次のことを意識すると良いかもしれません。

  • 「一番痩せる食事法」探しに疲れなくてよい。少なくとも半年時点では、糖質制限も低脂肪も大きな差はありませんでした。相性のよい方を選べば十分です。
  • 半年ではなく1年、その先を見据える。効果が消えやすいのは、続けられなくなるから。無理なく続けられる食事こそが、結局は一番の近道になり得ます。
  • 体重だけでなく血圧にも目を向ける。この研究では、多くの食事で血圧の改善が見られました。数字が動くとモチベーションにもつながります。
🔍 続けられる食事にするための小さな工夫
  • 好きな食べ物を「完全禁止」にしない。ゼロにするほど反動が大きくなります。
  • 週単位でゆるく振り返る。1日単位の増減に一喜一憂しない。
  • 家族や職場の食事と両立できる方法を選ぶ。孤独な我慢は長続きしません。

なお、この研究の対象は過体重・肥満の成人です。持病がある方や、標準体重の方にそのまま当てはまるとは限りません。食事の大きな変更は、かかりつけ医と相談しながら進めてください。

読後感

流行の名前を追いかけるより、「1年後の自分が続けていられるか」で選ぶ——。あなたにとって、無理なく続けられそうな食事は、どんな形をしているでしょうか。